知っておきたいビル用マルチエアコンの基礎知識を
分かりやすくご紹介
お店やオフィスビル、病院などで当たり前のように使われているビル用マルチエアコン。
身近な存在でありながら、どういう設備なのか、ほかの業務用エアコンとの違い、
ビル用マルチエアコンならではのメリットなどはあまり把握していないものです。
ビル用マルチエアコンの導入を考えている方はもちろん、実際に使っている方も、基礎情報と注意ポイントを知ることで、
適切な管理・運営に活用できます。ぜひ最後までご覧ください。
ビル用マルチエアコンとは
ビル用マルチエアコンとは、「1台の室外機に複数台の室内機を接続し、個別運転が行える分離型の空調システム」です。室外機と室内機は別々の電源になっており、冷媒配管総長は1,000m、室内外機高低差は50mまで対応しているなど、さまざまな環境に設置できる点も特徴です。
ビル用マルチエアコンの種類
ビル用マルチエアコンには、以下の6タイプがあります。設置する場所や用途に応じて適切なタイプを選択します。
VRV
VRVはVariable Refrigerant Volumeの略で、Variable Refrigerant Flow(VRF)と表記されることもあります。
1台の室外機に複数の室内機を接続する空調システムにより、消費電力の大幅削減が可能です。
標準モデルからハイグレードモデルまであり、目的と設置環境に応じて選択します。
更新用VRV
既設配管の再利用で、更新工事の作業を短縮できるためスピーディーな更新を実現します。
15年前のインバーター機の更新でも、消費電力を60%削減する省エネ空調システムです。
冷暖フリーVRV
冷媒配管が1つでも、接続された室内機ごとに切り替えることで、冷暖房の同時運転が可能になります。
熱回収技術によって、さらに省エネ効果が向上します。
氷蓄熱VRV
あらかじめ水槽に作っておいた氷を溶かして冷水にしたり、エアコンの冷媒を冷やしたりすることで冷房の空調を行うシステムです。
電力消費量がピークとなる昼間に活用すれば、消費電力を大幅に抑えられます。
水熱源VRV
長尺化が容易で配置しやすい水配管を利用して個別空調を行うシステムです。高層ビルや地下街などに向いています。
高暖房VRV
外気温が低いときにエアコンに不具合が起こりやすい寒冷地においても、長時間連続でパワフルな暖房が実現します。
暖房立ち上がり時間が従来に比べて大幅に短縮し、省エネ効果も得られます。
ビル用マルチエアコンと他の業務用エアコンの違い
ビル用マルチエアコンと似ている業務用(パッケージ)エアコンに、店舗用と設備用のエアコンが挙げられます。いずれも家庭用ではなく、オフィスや店舗など業務用として使われている点は共通していますが、似て非なるものです。それぞれの違いをご紹介します。
店舗用エアコン
業務用エアコンのなかでは最も多く店舗や小規模ビルで使用されており、分離型が一般的です。
ビル用マルチエアコンと同じく1台の室外機に複数台の室内機を接続しますが、できるのは同時運転のみで、室内外機の電源もつながっています。
冷媒配管総長は50~100m、室内外機高低差は30mまで対応可能です。
設備用エアコン
工場や厨房、ショッピングセンターなど大規模な場所や、エアコンの稼働時間が決まっている環境で使われることが多く、
分離型・一体型の両方があります。機械室に床置形を設置する「ダクト吹き出し」での使用が一般的で、個別制御はできません。
空調設備の種類については、「空調設備とは?意外と知らない空調設備の基礎知識と注意点」をご覧ください。
こちらもあわせてご覧ください。
空調設備とは?意外と知らない空調設備の基礎知識と注意点
ビル用マルチエアコンのメリット
多くのビルで利用されているビル用マルチエアコンには、次のようなメリットがあります。
省エネ効果
室外機と室内機が別電源で個別運転するため、使用していない室内機をOFFにしたり時間帯や混雑度合いに応じて細かな調整を行ったりすることが可能で、省エネに貢献します。
空調設備設計の自由度が高い
店舗用エアコンの冷媒配管50~100m、室内外機高低差30mと比べると、ビル用マルチエアコンは冷媒配管総長1,000m、
室内外機高低差50mと余裕があるため、大規模ビルにも対応可能です。
室内機の選択肢が豊富
1馬力・2馬力といった容量や、壁掛形・天井埋込形のように形状が違う室内機を個別に制御できるため、設置環境に合った室内機を選べます。
追加設置が容易
室外機に接続できる室内機の種類が多く、対応機種、対応可能台数であれば追加設置が容易に行えます。
ビル用マルチエアコンで注意すべきこと
形状、容量ともに異なる複数の室内機を個別に制御できるビル用マルチエアコンは、省エネ意識が高まっている昨今、
理想的な空調システムだと言えますが、把握しておくべき注意点もあります。
設置環境に合った室内機選び
設置する場所の広さや形、用途に合った室内機を選ぶことがポイントです。例えばおしゃれな内装のアパレル店舗で使うのであれば、
試着で衣服を着脱することを想定しつつお客さんの目につかない形状が好ましいため、一定以上の能力がある天井埋込形が考えられます。
設置環境に最適な形状、能力、台数の室内機を選ぶことは、機器の負荷軽減だけでなく省エネ効果、快適性アップにもつながります。
メンテナンスを欠かさない
室内外機で電源が違うとはいえ、室外機が故障すれば接続している室内機も使用できません。修理に時間がかかると、その期間は空調が使えないという事態に陥ってしまいます。空調は室温や湿度などの快適さだけではなく、清潔な空間維持も重要な目的であるため、適切な空調ができないことで、人の健康にも悪影響を及ぼしかねません。
初期異常の段階でスピーディーに修理を行い、未然に防ぐことが重要です。
そもそも定期的な点検・保守は、フロン排出抑制法によって義務化されています。定期的なメンテナンスは法令順守のためには当然のこと、
物理的耐用年数の延長、ランニングコストの軽減、快適性維持の観点などからも、非常に有効です。
物理的耐用年数とは別名「故障寿命」とも呼ばれており、大幅な機能低下がなく運転可能な期間のことです。
耐用年数には、このほかに減価償却費の計算に使うため法律で定めた「法定耐用年数」もあります。
詳しくは「業務用空調設備の耐用年数は?寿命をのばす方法や減価償却費についても解説」でまとめています。
また、メンテナンスについては「エアコンの維持に欠かせないメンテナンスの重要性・メリットを解説」で、
メンテナンス業務に必須のフロン排出抑制法の詳細は「知らないとまずい!業務用エアコンの法令点検の重要性」で解説しています。
あわせてご覧ください。
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ビル用マルチエアコンは、
適切なメンテナンスで効果が持続
部屋ごとに異なる室内機の設置と制御ができるビル用マルチエアコン。店舗、オフィスビル、病院など幅広い環境に対応可能な、現代に欠かせない空調システムです。その能力を長く効果的に発揮するためには、環境に合った機器選びとメンテナンスが欠かせません。
しかし、通常業務のほかに部品ごとに定期的な点検を行うのはメンテナンス担当者にとって大きな負担となるうえ、初期異常は目視や体感だけでは気づきにくいものです。そこで、IoT技術を用いたシステム導入が有効策となります。ここ数年で遠隔操作を活用したシステムが増えていますが、安定した店舗・ビル運営に必須のメンテナンスを任せるならば、多くの事例を持つ経験豊富なメーカーが安心です。
ダイキン工業は、2014年には年間運転効率を大幅に向上するビル用マルチエアコンを開発するなど、長年にわたる実績を生かしたうえで、新しいIoT技術を取り入れた空調機管理サービスを行っています。
例えば、「アシスネットサービス」や「エアネットサービスシステム」。
「アシスネットサービス」は、IoT端末を室外機に取り付けるだけで、業務用空調設備の運転データや修理記録などを収集・一括管理できるサービスです。空調設備の運転時間の見える化や異常検知のお知らせメール、中長期の修繕・機器更新の予算化までを含め、月額600円〜の低コストでサポートいたします。
「エアネットサービスシステム」は、クラウドを通じて24時間365日遠隔監視するサービスで、
空調機器が本格稼働する夏や冬の前に遠隔で行う「シーズン前遠隔点検」など多様なサポートがあり、メンテナンスを効率化できます。