空調設備とは?
意外と知らないエアコンとの違いや注意点
空調設備はオフィスや店舗などに当たり前のように設置されていますが、本来の定義や家庭で使われているエアコンとの違い、
空調方式の種類など具体的なことはよく分からない方も少なくないでしょう。
空調設備を正しく管理し最大限に効果を発揮するためには、空調設備そのものについて知っておくことも大切です。
この記事では空調設備の定義や機能、種類などの基礎情報から、実際の使用時に注意すべきことまでご紹介します。
ぜひ最後までご覧ください。
空調設備とは?
空調設備とは「空気調和」を行う設備のことです。「建築物衛生法」においては、空気を「浄化(空気清浄、換気)」し、「温度」「湿度」「流量(気流)」を調整する機能を備えたものだと定義されています。
また、空気調和を行う目的と環境により、保健空調(対人空調)と産業空調に分けられます。保健空調は労働環境の維持や居住空間の快適性など「人がいる環境の空調」であるのに対して、産業空調は物品の品質管理・保持や動植物の生育環境の維持を目的とした「物など人以外の環境の空調」です。
空調設備とエアコン、換気設備の違い
一般的に空調設備=エアコンと考える方は多いでしょう。
また、空調設備と換気設備についてどのような違いがあるのかを理解している人も多くありません。
そこで、よく混同されがちな空調設備とエアコン、空調設備と換気設備の違いについて詳しく解説いたします。
エアコンは「空気を調整する」設備
エアコンは正式名称「エアーコンディショナー(air conditioner)」であり、直訳すると空気を調整する設備です。
エアコンは室内の温度や湿度調節は行うものの、建築物衛生法で空調設備に定義されている「浄化」、いわゆる「換気」は含まれていないため、
法的にはそれ単体では空調設備には該当しないと言えます。
エアコンは換気設備を併用することで、空調設備に必要な浄化、温度、湿度、流量の4つの機能を果たせます。
換気設備は「室内と室外の空気を入れ替える」設備
換気設備は、室内の汚れた空気を室外の新鮮な空気に入れ換えるための設備であり、気密性の高まった現在の建築物において不可欠なものです。
建築物衛生法によると換気設備には、主に下記の4つの種類があります。
1. 窓等の換気に有効な開口部(居室の床面積の1/20以上)
2. 自然換気設備
3. 機械換気設備
4. 中央管理方式の空気調和設備
上記のなかで、1~3までは温度や湿度の調整機能がないため、それぞれ単体の機能では空調設備とは言えません。
4は冷暖房と換気を一元化している場合に限り、空調設備に該当します。
ただし、浮遊粉じんの量は0.15 mg/㎥以下であり、一酸化炭素の含有率が100万分の6以下(=6ppm以下)(2022年4月1日以降)、
室内の温度は18℃以上28℃以下(2022年4月1日以降)など、7項目の基準に適合する機能が必要です。
基本的にはエアコンと換気設備を併用することで空調設備として機能しますが、換気設備にもさまざまなものがあります。
例えばダイキン工業の「業務用換気機器ベンティエール」。汚れた空気を排出しつつも、熱と湿度を適切に室内に戻すことで、
エアコンに負担をかけずに快適な換気を実現する高機能な換気設備です。
空調設備の種類と機器
空調設備といっても、空調方式の種類や機器によって以下のように細かく分類されています。
空調方式は2つ
中央空調方式(中央管理方式、中央熱源方式)
中央管理室の空調機に取り込んだ外気を各室に送風するため、冷暖房と換気を同時に行うことが可能な方式で、代表的なシステムは「単一ダクト方式」です。そこから、さらに「定風量単一ダクト方式」と「変風量単一ダクト方式」に分かれます。
個別空調方式(個別管理方式、個別熱源方式)
中央熱源を持たず熱源と空調機が一体となっているか、室内機と室外機を冷媒配管で接続して、それぞれの機器で温度管理や換気、電源のON・OFFを行う方式です。
空調設備を構成する機器
空調設備は、全体の熱負荷を処理する冷却塔・冷却水ポンプ・給水設備などの「熱源機器」、対象空間に調整した空気を送るための冷却・減湿・加熱器、エアフィルター及び送風機などの「空調機器」、熱源機器と空調機器の間で冷温水、蒸気、冷媒などを搬送・循環させるためのポンプ・配管などの「熱搬送機器」によって構成されています。
熱交換器によって4つに分類
空調設備は、空気の温度や湿度を調整する熱交換器の種類によって4つに分けられます。
全空気方式
主な媒体は空気で、毒性・可燃性がないため、環境調和の観点から理想的なシステムですが、部屋ごとの調整には不向きです。
全水方式
主な媒体が水の、吸収型ヒートポンプです。
ダクトスペース不要な半面、空気の鮮度を保つための窓や設備が必要になります。
空気・水併用方式
主な媒体は空気と水で、自動で切り替えるタイプです。
全空気方式よりは省スペース化しますが、水を通す配管が壊れた場合、水損のリスクがあります。
冷媒方式
主な冷媒はフロンガスで、圧縮型ヒートポンプ。住宅や小規模オフィスなどの一般的なエアコンで使われています。
空調設備を使用する際の注意点
空調設備を長く安全・快適に使用するためには、以下のことに注意が必要です。
耐用年数を知る
購入した機器が正常に稼働する期間の目安とされている「耐用年数」ですが、実は3つあります。
物理的耐用年数
経済的耐用年数
法定耐用年数
「法定耐用年数」は減価償却費算出の際に使用する法的に定められた期間なので変えられませんが、経年劣化や摩擦に伴う大幅な機能低下を示す「物理的耐用年数」や、故障頻度の増加など経済的な負担による「経済的耐用年数」はそれぞれ「故障寿命」「耐用寿命」とも言われており、
適切な管理によって延ばすことが可能です。
「法定耐用年数」について詳しく知りたい方は、「業務用空調設備の耐用年数は?寿命をのばす方法や減価償却費についても解説」をご覧ください。
中長期的な視野でコストを考える
コスト削減のためにメンテナンスのコストを必要以上に省く考え方は危険です。メンテナンスが不十分だと結果的に修理代や機器交換代などがかさみ、トータルで換算すると逆に高くなってしまう場合があるためです。コスト削減は大切ですが、目先のことだけではなく、中長期的な視野で検討することが重要です。
なお、建物の建設から解体までの期間に発生する費用の総計を、ライフサイクルコスト(LCC)といいます。SDGsへの取り組みが叫ばれている今、
コストに関する考え方の主流であり、LCCの適切な管理は企業の安定経営のためにも重要な課題です。
詳しくは、「ライフサイクルコストとは?LCCを安く抑えて賢く経営する方法」をご覧ください。
適切なメンテナンスを行う
空調設備を使用する際は、居室内の空気が汚染されることを防止するために、建築物環境衛生管理基準によって、冷却塔や加湿装置に供給する水の汚染状況について月1回の点検、年に1回の清掃など、4項目にわたる措置が定められています。
また、フロン排出抑制法により「すべての第一種特定製品(業務用冷凍空調機器)において3カ月に1回以上の簡易点検」も義務づけられています。
法令を順守し清潔な空気と健康を守るためにもメンテナンスは必須ですが、適切なメンテナンスを行うことで故障予防による耐用年数の延長や
ランニングコストの削減、快適性の維持など、さまざまなメリットが享受できます。
フロン排出抑制法について、詳しくは「知らないとまずい!業務用エアコンの法令点検の重要性」をご覧ください。
また、空調設備のメンテナンスについては、「エアコンの維持に欠かせないメンテナンスの重要性・メリットを解説」も参考になります。
こちらもあわせてご覧ください。
空調設備を安全に使用するには、
メンテナンスが必須
空調設備は温度や湿度を調整し快適な空間を維持するだけでなく、汚染された空気を新鮮な空気に入れ替えて、安全な環境づくりを行っています。
健康で快適な生活を支えている空調設備は、定期的に点検し、異常時には早期対応するメンテナンスを欠かさないことで、より効率良く稼働できます。しかし、日々多くの業務を抱えるメンテナンス担当者には、目視による部品ごとの点検・管理が大きな負担となることも事実です。
そこで、IoT技術を取り入れたメンテナンスシステムがおすすめです。
メーカーとしての実績と経験が豊富なダイキン工業には、新しいIoT技術を用いて空調機管理を強力にサポートするサービスがあります。
例えば「アシスネットサービス」。遠隔操作や故障お知らせメールなどで担当者の負担を軽減しながら、初期段階の異常を察知し素早い対応ができるため、空調設備を常に最適な状態で運用することが可能です。
また、クラウドを通じて24時間365日遠隔監視し、空調機器が本格稼働する夏や冬の前に遠隔で行う「シーズン前遠隔点検」や、
突発的な故障やトラブル発生時に迅速な対応を行う「遠隔応急運転PLUS+」、空調機器の異常発生と同時に自動的にリセットを行い、
機器を復旧させる「遠隔復旧」など、さまざまな機能で空調管理業務をサポートする「エアネットサービスシステム」も提供しています。