知らないとまずい!業務用エアコンの法令点検の重要性
業務用エアコンの法令点検を怠ると、厳しく罰せられることを知っていますか? 普段の業務が忙しくてエアコンの点検まで手が回らない、そもそも法令点検のことをよく知らない管理者の方も多いと思います。令和2年施行の改正フロン排出抑制法により、業務用エアコンの点検業務を怠るなどルール違反時の罰則強化が盛り込まれました。管理のうっかり忘れが原因で、罰則が科せられるだけでなく、検挙に伴う企業のイメージダウンは避けられません。今回の記事では、改正フロン排出抑制法にのっとった法令点検の解説と、点検業務をIoT技術でサポートするサービスをご紹介します。エアコンの点検業務をきちんと理解し、点検業務の効率化を図りたいビルメンテナンス管理者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
フロン排出抑制法とは
フロン排出抑制法は業務用エアコンの法令点検の根拠法であり、フロン類の適切な回収や設備経年劣化に伴う漏えい防止を目的とした法律です。エアコンや冷蔵庫などの冷媒用途に使用されるフロン類は、高い温室効果を有するため、地球温暖化の観点から大気中への排出が好ましくない化学物質です。そこで、業務用エアコンおよび冷凍機器・冷蔵機器を廃棄する際、フロン類の適切な回収と破壊を義務付ける「フロン回収・破壊法」が平成14年に施行されました。しかし、フロン類の回収率低迷や対象製品の使用時におけるフロン類漏えいの発覚などの背景から、フロン回収・破壊法に加えて、フロン製造から廃棄までのライフサイクル全体にわたる包括的な対策が必要となってきました。平成26年には「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」(フロン排出抑制法)と名称変更し、フロン類使用機器の管理者に対して、機器の点検などが新たに義務付けられました。同法は平成27年4月に全面施行されています。令和2年には再び法改正され、フロン類の引渡義務違反や虚偽記載などに対する直接罰といった新たな規定も盛り込まれました。義務違反に対して、これまでは都道府県知事の勧告や命令を経て、従わないことを罰する間接罰規定でしたが、本改正を機により厳しい措置へと変わりました。
第一種特定製品とは
第一種特定製品とは、具体的には業務用エアコンや冷凍機器、冷蔵機器などであって、冷媒としてフロン類が使われているものを指します。フロン排出抑制法では、第一種特定製品に対する法令点検が規定されていますので、どの機器が第一種特定製品に該当するか事前に把握しておく必要があります。対象機器の見分け方には、以下の2つがあります。
1.室外機の銘板・シールの確認
平成14年に施行されたフロン回収・破壊法に基づき、フロン類を使用された機器には、第一種特定製品であることや、使用されているフロン種類・冷媒番号・数量(kg)などが銘板・シールに記載されています。室外機の銘板・シールの位置は、機器によって違いはありますが、室外機正面の右下辺りに付いていることが多いようです。一度確認してみましょう。
2.機器のメーカーや販売店に問い合わせる
どうしても銘板・シールが見つからず、対象機器かどうか判断に迷う場合、メーカーや販売店に確認すると確実です。なお、フロン類使用機器を生産しているメーカーのホームページには、フロン排出抑制法に関する専門ページが設けられていることがあります。その場合は、当該ページの「お問い合わせ」からメールや電話で連絡するといいでしょう。
管理者とは
業務用エアコンの法令点検を実施するのは「管理者」と決められています。対象機器の管理者の定義は、機器の所有や管理の形態によって異なりますが、原則は機器を所有して管理している方が管理者となります。令和2年の法改正に伴い、違反事業者には罰則が設けられているため、事前に関係者同士で話し合い、各機器の責任の所在を明確にしておきましょう。
管理者が取り組むべき事項
フロン排出抑制法には、第一種特定製品の管理者の管理意識を高め、フロンの漏えいを防ぐため、管理者が取り組むべき事項として、主に次のような項目をあげています。
適切な設置、適正な使用環境の維持
管理者は、機器周辺を清掃し、機器の損傷につながるような物を設置しないよう心がけ、点検・修理時の邪魔にならないよう作業スペースを常に確保することが求められます。
機器の点検
管理者は、対象機器の定格出力に応じて、決められた点検を定期的に行う必要があります。点検には、誰でも実施可能な「簡易点検」と、有資格者が行う「定期点検」の2種類があります。
機器の点検や整備に関する記録・保存
管理者は、適切な機器管理を行うため、業務用エアコンの点検・修理やフロンガスの充填・回収などを行った際には、機器ごとに履歴の記録と保存をする必要があります。
漏えい時の報告
管理者は、漏えいしたフロン類の数量をGWP(地球温暖化係数)で換算し、合計1,000トンを超える場合は、管理者情報や漏えい状況などを記入し、事業所管大臣へ提出する必要があります。
機器廃棄時の適切な対応
管理者は、業務用エアコンを廃棄するとき、第一種フロン類充填回収業者に依頼し、フロン類を回収したのち機器を廃棄しなければなりません。フロン類の回収を依頼する際は、管理者が充填回収業者に対して回収依頼書を交付し、機器回収後、充填回収業者は管理者に引取証明書を交付する必要があります。
違反時の罰則
令和2年改正前のフロン排出抑制法においては、違反事業者に対して都道府県知事からの勧告など命令を経て、従わないことを罰する間接罰が規定されていました。令和2年改正後は、間接罰に加えて直接罰規定も追加されました。最も罪の重い「フロン類をみだりに放出した場合」は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される可能性があります。
業務用エアコンの法令点検
フロン排出抑制法に基づき、業務用エアコンの管理者は点検業務を行う必要があります。点検には簡易点検と定期点検の2種類がありますので、それぞれ解説していきます。
簡易点検
簡易点検では、すべての第一種特定製品について、3ヵ月に1回以上の頻度で、外観の損傷、摩耗、腐食およびその他の劣化、油漏れの有無などをチェックします。安全に実施できる環境であれば、簡易点検は誰でも実施可能です。室内機と室外機に分かれた機器の場合、主に室外機の外観をチェックしますが、機器の構造によって点検箇所は異なります。
簡易点検を自社で行う場合は「エアコンの維持に欠かせないメンテナンスの重要性・メリットを解説」を、エアコンの掃除を自社で行う場合は、「業務用エアコンを自分で掃除する方法は?ポイントや業者に依頼すべきケースなどを解説」をご参照ください。
定期点検
定期点検では、第一種特定製品のうち、圧縮機に用いられる電動機の定格出力が7.5kW以上50kW未満の機器を対象に3年に1回以上の頻度で、50kW以上の機器の場合は1年に1回以上の頻度で、専門的な方法によるフロン類漏えい検査を行います。第1種及び、第2種冷媒フロン類取扱技術者などフロン類の性状及び取扱いの方法、機器の構造、運転方法について十分な知見を有する者だけが点検業務に当たることができ、通常専門業者に依頼することになります。検査方法には大きく「直接法」と「間接法」があります。直接法は、漏えいの可能性がある箇所に発泡液を塗布して吹き出すフロン類を検知したり、漏えい検知器を用いて検査したりと、漏えい箇所と思われる部分に直接働きかけて調べる方法です。間接法は、日本冷凍空調設備工業連合会の点検・修理ガイドラインなどのチェックシートを用いて、稼働中の機器の運転値が日常値とずれていないか確認し、漏れの有無を調べる方法です。依頼した専門業者は、上記いずれかの方法か、両方を組み合わせた方法で検査します。
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負担の大きい法令点検をIoT技術で効率化!
今回の記事では、業務用エアコンの点検についてご紹介しました。改正フロン排出抑制法に規定された法令点検には、誰でも実施可能な「簡易点検」と、有資格者の行う「定期点検」の2種類があります。簡易点検はすべての業務用エアコンが対象で、3ヵ月に1回と頻度も高く、管理者の負担はかなりのもの。定期点検についても、1年に1回とはいえ、点検依頼先を探す手間がかかりますし、点検費用が想定以上にかかる可能性もあります。多忙なビルメンテナンス管理者の方にとって、低コストで工数をかけずに法令点検を行うのは大きな課題だといえるでしょう。ダイキンの「アシスネットサービス」は、IoT端末を室外機に取り付けるだけで、業務用エアコンの運転データや修理記録などを収集・一括管理できるサービスです。3ヵ月に1回、簡易点検時期を管理者の方にメールでお知らせし、1年あるいは3年ごとに有資格者のサービスエンジニアが訪問して定期点検を実施するなど、法令点検にも対応。エアコンの運転異常通知、累積運転時間の把握など、平時のエアコン維持管理も含めて月600円からと、低コストでサポートします。
フロン点検に加えて、故障予知や遠隔での応急運転、復旧、点検など
空調機の停止期間を大幅に軽減する「エアネットサービスシステム」もあります。